5. ホルモン補充療法について


生理が始まってから閉経までのおよそ40年間にわたり、卵巣は女性に対して「女性ホルモン療法を行っている」といえます。そのお陰で、女性を植物にたとえれば「ちょうど花が咲いたときの状態」のまま維持していてくれている訳です。さらに、身心の若さを保つだけでなく、骨粗鬆症や血管の老化、脳の老化なども防いでくれています。そして、最近の研究成果をみれば、この「卵巣が行っているホルモン療法」が「実に理想的で、安全性の高い」ホルモン補充療法であることがあらめて浮き彫りにされつつあります。では、その代表的な特徴はどのようなもでしょうか?「卵巣が行っているホルモン療法」の特徴はおおむね、3点あるといえます。第1に、1.卵巣はエストロゲンを毎日分泌し、一方、黄体ホルモンは排卵後10〜14日間、周期的に分泌して、「生理を起こす補充方法」をとっている点です。最近のホルモン療法に関する研究報告から、この卵巣が行っている「生理を起こす方法」をまねた方法が、「妊娠したときをまねた、生理が起こらない方法」より安全であることが指摘されています。「妊娠したときの状態をまねた、生理を起こさない方法」では、ずっと黄体ホルモンを連続的に補充するため、「黄体ホルモンの望ましくない作用」が発現しやすく、乳癌の増加や心筋梗塞、脳梗塞等の危険性が高まることが報告されています。ですから、「妊娠したときの状態をまねた、生理が起こらない方法」は避けるべきです。二番目の特徴としては、2.卵巣は「エストラジオール」というエストロゲンを分泌しています。しかし、この「エストラジオール」は経口で服用しても、体内に吸収されませんので、内服では補充できません。そこで、妊娠した馬の尿から抽出した「エストロン」というエストロゲンを内服薬として投与しています。この内服薬は腸から吸収され、肝臓で代謝されて、一部「エストラジオール」に変換されて、心臓から全身へと運ばれます。一方、貼り薬では天然型の「エストラジオール」をそのまま皮膚を通して全身へと補充することができます。つまり、「貼り薬」は卵巣が分泌している天然型の「エストラジオールと全く同じもの」を補充していることになります。三番目は3.卵巣から分泌されたエストロゲンは肝臓を通らず、心臓に到達して、全身に運ばれる点です。しかし、内服薬のエストロゲンは肝臓を通過するため、肝臓に作用して、中性脂肪を上昇させたり、血液が固まりやすくする物質を産生させたり、動脈硬化や血栓形成の引き金になるCRPという物質を増加させたりします。実際、長期にわたって内服薬を内服すると、脳梗塞が若干増加する報告もされています。一方、「貼り薬」は卵巣から分泌されたエストロゲンの場合と同じで、肝臓を通過しませんので、そのようなことはなく、安全です。事実、「貼り薬」の場合には静脈血栓の危険性に影響しないということが最近の研究で報告されています。ですから、ホルモン療法を、「貼り薬で、しかも生理を起こす方法」で行えば、卵巣が行っているホルモン療法に極めて近い方法で、つまり、より自然に近い、安全性な方法で、女性ホルモンを補充することができます。

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