| 金沢大学医学部附属病院の周産母子センターでは、正常妊娠以外に、他院より紹介の産科疾患を多数扱っています。以下に、当院で治療している主な疾患と、当院で施行されている治療法の一部を紹介します。 |
| ■ 切迫流産、切迫早産 |
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| 妊娠22週以前にみられる下腹部痛,出血など流産の危険が高まっている状態を切迫流産といいます。治療としては安静、止血剤や子宮収縮抑制剤の投与等を行ないます。入院が必要な場合もあります。また22週以降37週未満での早産の危険が高まっている状態を切迫早産といいます。基本的には安静、子宮収縮抑制剤(ウテメリン)の投与を行ないますが、胎児異常や母体の妊娠合併症(中毒症、子宮頚管炎、双胎、子宮筋腫など)が原因の場合もありますので、それぞれ適切な治療を選択することにしています。 |
| ■ 妊娠高血圧症候群 (妊娠中毒症)の管理 |
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従来、妊娠中毒症と呼ばれていた病態は、妊娠高血圧症候群との名称にあらたまることになりました。妊娠高血圧症候群とは妊娠中に高血圧、蛋白尿、浮腫の一つもしくは二つ以上の症状がみられ、かつこれらの症状が単なる妊娠偶発合併症によるものでないもので、高血圧の家系の妊婦、慢性腎炎などの既往や、高齢妊婦、肥満妊婦、多胎妊娠などで起こりやすいといわれています。症状の程度により軽症または重症と判定されますが、重症化すると、胎児発育障害や胎盤の早期剥離、子癇(痙攣発作)、脳出血、肺水腫、腎障害、などに至る場合もあり、早産、死産の原因になるばかりでなく、母体の生命にも関わります。
管理としては、安静、食事療法(低カロリー減塩食)を基本とします。これらの管理にもかかわらず、症状が悪化していく場合は、入院管理が必要となります。降圧剤を使用する場合もあります。母体と胎児の状態を厳重に監視し、場合によっては早めに分娩誘発により妊娠を終了させたり、緊急の帝王切開による分娩の場合もあります。他院で妊婦健診を受けられている方でも、妊娠高血圧症候群を発症した場合、当院に紹介されることがあります。 |
| ■ 多胎妊娠 |
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| 近年の生殖補助医療技術(ART)の進歩により、多胎妊娠(双胎、品胎)の頻度が増えてきています。体外受精では、妊娠率を向上させるために多数の受精卵が子宮に移植されてきましたが、多胎妊娠が多くなるため、最近は移植胚数を制限する事が一般的になっています。多胎妊娠の場合、妊娠合併症(切迫早産、妊娠中毒症、胎児発育遅延など)や、分娩時の併発症(胎盤剥離、弛緩出血など)の危険性が高くなります。また出生児には未熟児、呼吸障害などのため保育器での管理が必要な場合が多く認められます。したがって、上記の合併症を予防するた
めにも多胎妊娠に対しては厳重な母体胎児管理が必要となります。頻回の胎児超音波検査に加え、中毒症や早産の予防を重点的に行い、異常が発見された場合には、それぞれの状態に対応した治療を行っています。なお、他院で妊婦健診を受けられている方でも、多胎妊娠による妊娠合併症を発症した場合、当院に紹介されることがあります。 |
| ■ 子宮外妊娠 |
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近子宮の外に妊娠した場合を子宮外妊娠と言います。妊卵の着床した場所により卵管妊娠、卵巣妊娠、腹膜妊娠、頚管妊娠(子宮頚部の妊娠)に大別されますが、もっとも多いのが卵管妊娠です。クラミジアなどの性感染症(STD)による卵管炎や子宮内膜症による卵管の癒着などがあると、子宮外妊娠を起こしやすいといわれています。なお、体外受精などの生殖補助医療(ART)に子宮外妊娠の発生率が高いといった報告もあります。妊娠反応が陽性で子宮の中に胎児の入っている袋(胎嚢)がないときにこの子宮外妊娠を疑うことになります。経膣超音波検査と妊娠によって増加するホルモン(hCG:ヒト絨毛性ゴナドトロピン)測定により、比較的妊娠初期で診断がつけられるようになってきました。卵管で成長した胎嚢が卵管を突き破って出血し始めた状態が子宮外妊娠の破裂ですが、かなり出血しますので処置が遅れると母体の生命に関わる場合もあります。したがって破裂する前に診断することが求められています。
治療としては、腹腔鏡手術により、妊娠している卵管の切除が行なわれる場合が多いです。状態によっては、薬物療法や妊娠している部分だけを切除し卵管を温存する選択肢もあります。ただし、残せば妊娠した部分が完全に取りきれないで再手術する可能性があったり、残した卵管にまた子宮外妊娠を起こす可能性もあります。 |
| ■ 不育症、習慣流産 |
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| 不育症とは妊娠はしますが、胎児が発育せず、流産あるいは子宮内胎児死亡におわって、生児を得ることができない状態をいいます。妊娠22週未満の流産を3回以上連続して繰り返すものはとくに習慣流産とよばれています。不育症の原因として以下のものがあげられます。 |
| 染色体異常 |
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| 夫婦どちらかに染色体の異常が認められる場合があります。習慣流産の患者に認められる染色体異常のほとんどが相互転座とよばれるものですが、この場合、子供の2/3は流産し、1/6は親と同じ転座保因者、1/6は正常者として生まれてきます。転座保因者でも妊娠を繰り返すうちに生児を得ることが可能です。 |
| 子宮異常 |
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| 中隔子宮、双角子宮などの子宮奇形や子宮筋腫、子宮内膜症といった婦人科疾患が関係している場合もあります。中隔子宮や粘膜下筋腫にたいしては、子宮鏡下に中隔や筋腫を切除する治療(子宮鏡手術)を行なっています。また双角子宮にたいしては、ストラスマン手術とよばれる子宮形成術を行なうことがあります。子宮筋腫にたいしては、腹腔鏡補助下に筋腫核出術を行なうことが多く、子宮内膜症にたいしても腹腔鏡手術を第1選択としています。 |
| 内分泌異常 |
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| 甲状腺機能異常や高プロラクチン血症、卵巣の黄体機能不全などがある場合です。薬物療法や妊娠初期に黄体ホルモン補充を行ないます。 |
| 自己免疫異常 |
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| 自己免疫異常の代表的なものとしては抗リン脂質抗体症候群があげられます。従来、自己免疫疾患患者において流死産率の高いことが知られており、こうした患者が抗リン脂質抗体を保有する場合が多いです。抗リン脂質抗体陽性の場合、血栓を形成しやすくなります。胎盤でも血栓が形成された場合、胎盤循環が障害され、子宮内胎児発育遅延や流産、死産を引き起こしやすくなります。治療としては血栓の形成を抑制するために少量のアスピリンの投与を妊娠初期より行なっています。抗リン脂質抗体強陽性患者の場合は血液内科と相談の上、低アスピリン療法とヘパリン療法の併用を入院管理にて行なう場合もあります。ステロイド療法を併用する場合もあります。こうした治療により重症の抗リン脂質抗体症候群の患者でも生児を得られるようになってきています。 |
| 同種免疫異常(母子間免疫の異常) |
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| 胎児胎盤が母体から拒絶されずに発育するという母子間免疫の機構はいまだ十分に解明されていませんが、この機構に異常をきたすと不育症(初期習慣流産)になると考えられます。この同種免疫異常によると考えられる初期習慣流産に対して夫の血液より得られたリンパ球を患者に注射する免疫療法(夫リンパ球輸血)を施行しています。リンパ球輸血の有効性についてはこれまでさまざまの臨床試験によりほぼ支持されています。 |
| ■ 出生前診断 |
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| 超音波検査やMRI検査・DNA検査などを行い、胎児の心奇形・不整脈・中枢性疾患・胎児腫瘍・先天性代謝性疾患など多くの疾患を出生前に診断しています。関連施設からの紹介症例も多く、診断のみの依頼もお引き受けしています。世界で初めての症例の診断にも成功しています。診断後、小児科(新生児治療)専門医との検討を行ない、出生前治療を行なったり、或は最適の分娩時期、分娩方法を決め出産した後新生児治療を行なったりしています。夫婦、家族へのカウンセリングも行なっています。 |
| ■ 内視鏡補助下子宮筋腫核出術(LAM) |
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| 妊娠をめざして子宮を温存する核出手術を実施しています。腹腔鏡・子宮鏡などを用いて数多くの手術を実施しています。創が小さい、術後の疼痛が少ない、回復が早いなどのメリットがあります。術後の妊娠率も高くなっています。 |
| ■ 卵管鏡下卵管形成術 |
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| FT(Falloposcopic Tuboplasty )カテーテルによる治療 |
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| 卵管閉塞(つまっていたり)、卵管狭窄(通過性が悪い)など卵管が原因で不妊症と診断されている方が適応となります。この処置をした後の妊娠率は20〜30%とされています。不妊症で悩んでいるけど体外受精にはちょっと抵抗がある方には良いかも知れません。健康保険の適応もあります。具体的には、非常に細い内視鏡の入ったプラスチックのチューブを卵管の中へ挿入し閉塞部位の拡張と卵管の中の観察を同時に行うものです。 |
| 入院をしないで、外来でFTカテーテルの処置のみ行っている施設も多いようですが、「手術をしたのによくならない」ということをできるだけ減らすため当院では基本的に腹腔鏡を併用して手術を行っています。腹腔鏡を併用することで安全・確実に処置を行うことができるだけでなく、おなかの中を観察し、ほかに不妊の原因がないことを確認し問題があれば適切な処置を行うことができます。詳しくは外来でご相談ください。 |
| ■ 生殖補助医療(ART)・体外授精(IVF-ET,ICSI) |
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排卵誘発剤の注射をほとんど行わずに自然周期採卵による体外授精を実施しています。通院は少なく、副作用もほとんど無くなっています。また、泌尿器科と協力し、精巣内精子を使った顕微受精も実施しています。内視鏡手術とARTを駆使して、妊娠率を高めています。
(※ 現在、体外受精は休止しております。) |
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